2020年3月27日大月～下花咲～上花咲～下初狩～中初狩～白野～阿弥陀海道～黒野田まで歩きました。

※（RO）＝写真の所にマウスのポインターを持っていくと違う写真が見えるロールオーバー効果が設定されています。

【大月駅】		【溝口本陣跡】		【富士山道追分道標】
今回は大月駅から旅を再開しました。背後の丸い形の山は岩殿城跡です。この城は武田家臣小山田氏の城で、武田勝頼が落ち伸びてきた際、小山田信茂が寝返って離反したため武田氏が滅亡することになった曰くある所です。		大月駅南口から商店街を西へ進むと市役所の先に大月宿溝口本陣跡があります。遺構はありませんが、「明治天皇御召喚所趾」碑が残されています。大月宿は富士街道追分を控え富士講の人々で賑わっていました。		本陣跡の先、桂川に架かる大月橋手前に富士山道追分道標他の遺跡が並んでいます。ここから南下して富士山へ向かう富士街道の追分で、道標には「右甲州道中　左ふじミち」と刻まれています。他に津島牛頭天王社、馬頭観音、常夜灯などが立ち並んでいます。

【下花咲の一里塚跡】		【星野本陣跡】		【廿三夜塔】
追分から国道20号線に沿って500m程進むと下花咲の一里塚跡があります。南塚が残されていてエノキが植えられています。江戸日本橋より二十四里目。傍らに芭蕉句碑、徳本念仏塔、庚申塔、廿三夜塔、道祖神、馬頭観音などが立ち並んでいます。		一里塚跡からさらに500m程進んだ所に下花咲宿星野本陣跡があります。現在の建物は1835年の火災後に再建されたもので国の重要文化財です。内部を見学できますが、この日はコロナウィルスの影響で閉館でした。この辺りが下花咲宿の中心地で「明治天皇花咲御小休所」碑が建てられています。		中央自動車道高架の少し手前に石仏石塔群としめ縄の張られた廿三夜塔があります。明治二十七年（1894年）建立で、この道が旧道ですが、現在この先は行き止まりになっています。この辺りに上花咲宿があったと思われますが面影はありません。（RO）

【親鸞聖人舊跡太布名號碑】		【聖護院道興歌碑】		【奥脇本陣跡】
国道20号線真木交差点の歩道橋下に親鸞聖人舊跡太布名號碑があります。ここから北へ2Km行った所にある福正寺は真言密教の寺でしたが、親鸞聖人と出会い浄土真宗となりました。また聖人が白布に「南無阿弥陀仏」と名号を書いたものが太布名號です。		真木交差点の先、しばらく進んだ後、旧街道は源氏橋で笹子川を渡り、しばらく線路沿いを進んだ後、再び踏切で線路を越えると聖護院道興歌碑があります。聖護院の門跡を勤めた道興がこの地を訪れた際に詠んだ歌が刻まれています。（RO）		旧道が再び国道20号線と合流したところに下初狩宿奥脇本陣跡があります。門構えが残されていますが、ここは山本周五郎の生誕地であり、石碑が建てられています。（RO）

【廿三夜塔】		【旧今井医院今池家】		【芭蕉句碑】
本陣跡の少し先、初狩駅前交差点近くに二十三夜塔と常夜灯があります。この辺りが下初狩宿の中心地でした。この宿は中初狩宿と合宿で、問屋業務を半月ごとに交代していました。		下初狩小学校東交差点の手前に今池家の建物があります。旧今井医院、大正時代の建築でコンクリート造りに似た外観ですが木造モルタル造りという特徴で国登録有形文化財です。		初狩小学校の傍に芭蕉句碑があります。芭蕉は1682年江戸の「八百屋お七の大火」で焼け出され、初狩に住む実姉を頼り半年間ここで暮らしました。「山賊（やまがつ）の　おとがいとずる　葎（むぐら）かな」

【小林本陣跡】		【石仏石塔群】		【船石碑銘】
芭蕉句碑から約5分ほど歩いた側子バス停の先に中初狩宿小林本陣跡があり、「明治天皇御小休遺跡」碑が建てられています。この辺りが中初狩宿の中心地です。ここは下初狩宿と合宿で問屋業務を半月交代で行っていました。		岩殿城主小山田信茂の首塚案内板の少し先の石垣壇上に石仏石塔群があります。馬頭観音、至音塔、南無阿弥陀仏名号碑、1711年造立地蔵尊、1778年建立秋葉山毎夜燈などです。		国道が笹子川に架かる船石橋を渡ったところに船石碑銘が建てられています。親鸞聖人が船形の石に座って説法を行った船石がありましたが、1907年の洪水で流されてしまいました。傍らに船石の道標が倒れて残されていました。（RO）

【白野宿表示板】		【小社群】		【白野宿本陣跡】
滝子川を越えてバス停のある旧道に入っていくと白野宿になります。火の見やぐらの向かい側の公民館に白野宿表示板があります。この宿は阿弥陀海道宿、黒野田宿と合宿で月の10日間問屋業務を行っていました。		火の見やぐらの奥に四つの小社などが立ち並んでいます。山の神社、金毘羅社、白山権現社、天織姫社と秋葉常夜灯、1806年建立二十三夜塔などです。		火の見やぐらの先に宝林寺山門がありますが、その両脇が白野宿今泉本陣、天野脇本陣があった所だと思われます。標識はありませんがそれらしい家がありました。

【子（ね）神社】		【立石ー１】		【立石ー２】
旧道が再び国道と合流したところに子神社があります。白野村の鎮守で、かつてはここから大鹿峠へ向かう裏街道がありました。		旧道が再び国道と合流した後、大鹿川橋を越えた先に立石があります。これはこの地に伝わる桃太郎伝説で鬼が投げた石杖（立石）が百八十八番供養塔と馬頭観音群の奥にあると言われていますが、よくわかりませんでした。（RO）		立石の手前の道からJR中央本線のガードをくぐると、再び伝説「立石坂の立石」の案内表示があります。この先の辺りから線路沿いを見ると、ひょっとしてこれかな？と思う石が見えました。（RO）

【萬霊塔】		【稲村神社】		【男女合体道祖神】
ガードの先から線路沿いの旧道を進んでいくと、住宅敷地の一角に萬霊塔が建っていました。生きるもの全てを供養している塔です。		旧道の火の見やぐらを過ぎると稲村神社があります。吉久保村、原村の氏神で1327年頃創建の古社です。境内には一つの根から三本の幹が聳える大杉があり、馬頭観音、二十三夜塔などが並んでいます。（RO）		大杉の根元に男女合体道祖神がありますが、男根と女陰が祀られた昔の形で残されています。子孫繁栄を願った道祖神ですが、このような形の道祖神は明治の「淫祠邪教の禁」という宗教政策によって撤去処分されました。

【親鸞聖人念仏供養塚】		【葦ヶ池跡碑】		【笹一酒造】
稲村神社の前に親鸞聖人念仏供養塚があります。葦ヶ池で毒蛇となり旅人を苦しめていた娘を親鸞聖人が小石に南無阿弥陀仏の名号を書き、葦ヶ池に投げ入れて済度したという伝説があります。		稲村神社の西に葦ヶ池跡があります。この地を治めた地頭小俣氏の娘が修行僧に心を寄せたが、悲恋に終わり葦ヶ池に身を投げて毒蛇となったという伝説があります。小俣氏の子孫は現在も近くに住んでいます。（RO）		旧道が再び国道と合流して笹子川を渡ると阿弥陀海道宿になります。そこに大正8年創業の笹一酒造があります。敷地内には酒遊館という販売店・レストランが併設されています。

【阿弥陀堂跡】		【黒野田宿】		【笹子駅】
笹一酒造の裏手に阿弥陀海道宿の元になった阿弥陀堂跡があります。奈良時代の名僧行基が笹子峠の悪霊を鎮めるために自ら彫った阿弥陀如来像を安置し、ここを「阿弥陀海」と命名し、参道を阿弥陀海道と呼びました。これが宿場名の由来ですが、小さな宿場なので白野宿、黒野田宿と三宿で一宿の役割を果たしていました。		阿弥陀海道宿のすぐ先にJR笹子駅がありますが、この辺りが黒野田宿でした。笹子峠を控えていたので賑わっていましたが、白野宿、阿弥陀海道宿と三宿の合宿で、月のうち三分の一ずつ問屋業務を割り振って分担していました。峠の茶屋で「峠の力餅」として商われていた名物「笹子餅」が現在でも近くの店で販売されています。		この日の旅はここで終了し、笹子駅から帰りました。この駅は昼間は1時間に1本、朝夕でも2本程度の列車しか止まらないので、列車の時刻に合わせて旅の時間を計算する必要があります。時間に余裕のある場合は近くの酒造を覗いてみるのもいいかもしれませんが、改札（無人）から列車が止まる位置まで少し距離があるので要注意です。

【大月～黒野田までの地図】

【道中日記】

この日は、甲州街道最大の難所笹子峠越を次回に実施するために、手前の黒野田宿まで行くことを目標にしました。距離は13Km程度ですが宿場の数が多いのは、ほとんどが近くの宿場との合宿で問屋業務を月の中で分担していたからです。甲州街道はこれまでも高井戸宿、布田五ケ宿などで合宿がありました。小さな宿場では問屋業務が大きな負担だったのだと思います。 　さて、今回歩いたところも桃太郎伝説や親鸞聖人伝説が残されていました。白野の立石伝説や、親鸞聖人の真木の旧跡、船石、葦ヶ池の毒蛇伝説など、史跡や遺跡を訪ねるのと同じように民話や伝説を探すのも旅の楽しみの一つです。今回は葦ヶ池跡を歩いていた際、ガイドブックに毒蛇伝説の元になった小俣家が近くにあり、子孫が現在も住んでいると記されていたので行ってみたら、たまたま小俣家の人が外にいて声を掛けたら詳しく話をしてくれました。伝説のその後の話では、毒蛇は親鸞聖人に済度された後、伊豆の弓ヶ浜の寺に祀られているということでした。旅の途中で資料館や史跡のガイドさんに説明を聞くことがありますが、興味深い話なので時間があればゆっくり聞きたいところですが、時間の計画があり、列車の時刻が迫っている時などは残念ながら途中で失礼することになります。今回も笹子駅の時間が気になってゆっくり聞けなかったのが少し残念でした。